アーミッシュおじさんのところに越してきて、6ヶ月目、いよいよハードルが超高い冬越しが始まる。なぜ「超高い」のかというと、今までもハードルは高かったが、それにも増して高いという意味だ。今まではといえば、例えばこういう感じ。
入居してすぐに雨漏り(5ヶ月間治らなかった)、騒音、キッチンシンクの水道の水の温度や量の調整ができない、両手でお皿を洗えない、シンクから出るパイプがとても細いダメ、詰まりやすい、トイレは水がもったいないので頻繁に流さないでと言われるし、シャワーの熱いお湯は出る量が限られているため、ポータブルなお風呂を用意しても水がたまらない(よって、お風呂なし)、ガスレンジはキャンプで使うようなミニコンロにミニプロパンをつけた状態でクッキング(よって、手の込んだ料理は無理)、冷蔵庫は小さいのを貸してくれたが、結局もう少し大きいのを自分で買う羽目に(普通アメリカの家具付きアパートを借りた場合、キッチンの大きな電化製品は全部付いている)、下でおじさんが頻繁にする洗濯のかなりきつい化学薬品入りの洗剤の匂いが上の私のスタジオに満喫(私が化学薬品なしの船内をホームメード)、スタジオは一面がガラス張りで近所の家がすぐそこなので、カーテンを作って吊るしていたら(ちなみにスタジオで吊るしたカーテンは全部で20枚ほど。それほどここのおじさんは、オープンなガラス張りが大好き)、「太陽が入って来ないから暖かくないよ。田舎は都会と違って、近所の人が人の家を覗き込むことはないよ!」と厳しく諭され、しかもそのうちの一つは三角で、「三角の窓がなかなか見つからないんだよねー」と、その部分だけ開けっぱなし(鳥や蜂やハエがじゃんじゃん自由に出入り。閉めてというと、本当に鳥が入って来なくていいのかと聞かれた!)、荒ゴミは近所のおじさんの友達の飼っている豚に持っていったりよその畑の堆肥の中に入れたりと策を考えた苦難の挙句、庭に穴を掘って入れるもプロセスせずにすぐ一杯になり、「野菜、植えてもいいよ」と言われるもこのおじさん、実は自分で野菜を育てる人ではなく、前にお世話になっていたホームステダー(自給自足生活を営んでいる人)のところから持ってきた苗や植物は枯れてしまい、。。。などなど。おじさんの「住んでもいいよ、スペース貸してあげるよ。」の意味がこういうことだったとは!何度も、「もう無理!家賃払ってるのに水も使えないしお風呂にも入れない、料理も満足にできない!」と思ったが、そのうちに、あーそうなんだ、彼の「住むところを提供する」コンセプトは、私の知っている環境での「アパートを貸す」とはだいぶん違うんだなとわかってきた。「アパートを貸す」のではなく、「住むところを今から徐々に作るから、住めるようになったら家賃を払って。」なので、「住めるように」は完璧に住む環境が整っているというわけではない。いわゆる「骨組み」だけだ。時間をかけてじっくり完成させていくその途上のスペースに住まわせてもらっているというわけだ。なるほどね!とほんの少し納得。それにしても、これで家賃7万は高くない?
そして、冬はまた全く別問題だ。
ペンシルバニアのこのあたりは冬が非常に厳しいため、(日本で言うと北海道でまだ雪も降っていない頃から雪が降り、11月から氷点下、最後の霜は大体5月の終わり)冬だけ暖かいところに住む人が少なくない。フロリダやアリゾナなど、暖かい場所にもう一つ住居を持っていて、そこに住むと言うのが普通のようだ。ここのアーミッシュおじさんも冬は決まってコスタリカやニカラグアの別荘に住んでいる。でも、私にはそういう家も予算もないので、ここペンシルバニアにいるしかない。そういうわけで、アーミッシュおじさん、今までずっと夏仕様で使ってきた自分の家の一つ(いくつも持っている)を冬仕様に準備してくれたのだ。断熱材を入れて、毛布やクッションで穴をカバーして、空気が入ってくる隙間を防ぎ、あとはプロパンを二階に引いて、ストーブと繋げると言う作業。私の借りているスタジオと寝室は続いていて、どちらにもプロパンストーブを入れてくれた。
と、ここまでは良かったのだが、ある日、屋根から水滴が。。。しかも一箇所ではなく、雨も降っていないのに多数の箇所に水滴が落ちてくるのだ。また雨漏り?でも雨降ってないのにねー。。。と思う思わぬうちにピタパタと水滴は落ちてくる。慌てておじさんを呼ぶと、彼は扇風機を持って現れた。「これ、どうしてかわかる?屋根じゃないよ。」とニンマリ笑うおじさん。スタジオのストーブを夜消してしまうと、部屋が寒くなる、次の日にストーブをつけると、部屋が暖まり、冷たい空気が水になって落ちてくる、屋根に断熱材が入ってないからと説明してくれた。えー!と言うことは、夜中ストーブをつけていないといけないと言うこと?!!!ここいらでは、ストーブの使用量によっては、月に暖房費が5、6万かかることも珍しくない。その費用を節約するために、私はスタジオの暖房をできるだけ切るようにしていた。夜は特に、誰も使ってないし。それが、このピタパタ落ちてくる水滴を作り出していると言うのだ。あれ?でもおじさん確か、暖房費節約したかったら、寝室だけつけとけば良いよって言ってなかったっけ?じゃあどうすればいいんですか?「これがペンシルベニアの性(さが)でねえー。あんたも悪いことは言わないから、冬にコスタリカやニカラグアにきた方がいいよ。もう家賃払ってるからタダで家に住んで良いよ。暖房費払うぐらいだったら、南米に悠に2−3か月住めるよ。」とおじさん。見ていると、扇風機で暖かい空気を上から下に回してみようと、早速ハシゴを持ち出してきて、扇風機を設置。1時間後、だいぶん部屋が温まってきた。でも、この扇風機、音がうるさいんですけど。。これ、どのぐらいつけとけば良いの?予期せぬときに、水がピタパタ落ちてくるのも困るけど、扇風機付けっ放しも困るよ。お客さんも来るんだし。さあ、これ、どうやって解決するのでしょうか?